明治維新と日本国憲法に示された歴史的な教訓を生かしていこう

座長 長谷川祐弘

 新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックの拡大は、世界中の国々で多くの感染者と死者をもたらしている。グローバル・サウスと呼ばれる貧困層の多いい発展途上国に感染が広まることによって感染者数が数千万人そして死者が数百万人に達する可能性もあると推測される。そして同じような危機を人類にもたらす地球温暖化、核兵器再拡張、地域紛争、サイバー攻撃、人工知能(AI)の制御不能状態の可能性が指摘されている。このような地球規模的な脅威になってきていることは、私たちの問題の取らえ方に転換が求められていると言えよう。私たちは人類の誕生から今まで進化してきた歴史的な道のりと将来に向かう方向性を十分と理解して、グローバル・ガバナンスを推進していくことであろう。

 地球規模的課題や危機の対応するにあたって、ウエストフェリア国家主権体制では対処できなくなったのは明らかだ。国境を越えた国際社会全体の利益と世界の全ての住民の安全と尊厳を守るために指導者や人々が一体となって行動することが必要となってきている。世界の国々がお互いのアイデンティティーと尊厳を認めながら、地球規模の問題を扱うことが出来るグローバル・ガバナンスの構築を試みる時がきたと言えよう。そして急速なグローバリゼーションが加速しているが、政治も同じように新たな次元の高いレベルへと進化する必要がある。その為にリーダーシップを発揮できるのは、明治維新と第二次世界大戦後に歴史の教訓を学んで日本人であるとおもう。

 徳川幕府が外来の宗教や思想の侵入が日本の社会を破壊すると「鎖国」をしたことは周知のことである。その間に西洋諸国では産業革命がおこり経済が発展し世界を君臨するようになった。そして日本にも開国を迫ってきた。鎖国状態を維持してきた江戸幕府は「黒船」に迫られ開国した。薩長同盟は徳川幕府に替わって天下を取るということをせずに「明治維新」で260ほどあった独立した「藩」を解体して中央集権国家を構築した。それは維新などではなく政治社会経済組織の大革命であった。そして強力な近代国家を成し遂げた日本は西欧諸国と同じように近代国家を構築したが、歴史の流れに反して植民地の獲得に邁進した。

 日本が第二次世界大戦から学んで貴重な教訓は日本国憲法に謳われた。すなわち人間の自由と尊厳を重んじ、恒久の平和を念願し、全世界の人々がひとしく恐怖と欠乏から免かれ、安全と生存を確保できるように、武力ではない相互信頼に基づいた国際協力で「名誉ある地位」を国際社会で得ることを誓った。そして日本が行ってきた外交政策は2013年の東日本大震災の時に国際社会から圧倒的な同情と支援されたことに現れたといえよう。今こそ、自国民だけの安全と福利のみならず、国際社会の全ての人たちの生命を守ることが、人類の崇高な理想と目的を達成することになるとの認識を抱いている。人類共生の未来を切り開き、世界の市民と共に新たな世界観に基づいたビジョンを持って、理想が現実になるように、日本人がリーダーシップを発揮する時です。

日本人は国際社会で認められている人間の善なる二つ資質を持っていると言えよう。その一つは自己中心ではなく共同体への心構えである。社会での格差と分断が生まれる原因は、社会を構成している個々の人たちが 「自分への執着」に偏っていることである。国際社会では自己そして自国の短期的な利益のみを重んじる傾向があるが、日本は国際協調を重んじてきた。日本が持っている二つめの善の資質は社会全体の福利厚生を守る倫理的な精神と云えよう。自然災害とか紛争が起きるとスーパーや百貨店など破壊して略奪を行うことが皆無な日本は世界で稀な国といえよう。自己中心から脱却して競争から協力へ進むことが求められている世界では日本がリーダーとして活躍する場は多々あると言えよう。

令和2年9月1日

国会有識者諮問機関 グローバル・ガバナンス推進委員会座長

長谷川祐弘

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